最近の判例を分析してみると、以下の順位で責任追及されているようです。
① 滑りやすいと分かっていた所有者(施設オーナー)
② 滑りやすいと気付いていた施設管理者(ビルメン等)
③ 滑りやすい材質を使用した設計者(ゼネコン等)
④ 滑りやすい材質の床材を提供した製造者(メーカー等)
⑤ 滑って転倒した利用者(ユーザー本人)
このように、①〜④までの全てに責任が無かった場合に初めて、転倒者本人の不注意となるのです。
ビルや施設の安全管理上、避けては通れない滑り事故。
もう対策はお済みでしょうか?
JR池袋駅ビル7階通路で主婦(69歳)が転倒、左足を骨折し、左股関節の機能が失われる後遺症が残った。この主婦は、駅ビル会社『池袋ターミナルビル』を訴え、これに対し東京地裁が「転倒事故は床に油や水などが付着し、滑りやすくなっていたことが原因である」として、2,200万円の支払いを命じる判決を出した。
大阪市内のコンビニエンスストアで、買い物中に転んでケガをしたのは、店側が床を濡れたまま放置していたのが原因であるとして、東大阪市在住の女性がファミリーマート(本社:東京)に慰謝料など約1,000万円の支払いを求めた裁判で、大阪地裁は「ファミリーマートは、客が転倒しないようにする義務があった」として、115万円の支払いを命じる判決を出した。
事故当時、被告は施設各所に足拭きマットを置き、踊り場には体を拭くように促す注意書きを掲示していたが、プール・シャワー利用後、水着が水分を相当含んだ状態で利用者が通行することがあり、本件廊下の床面に水滴が飛散し、滑りやすくなっていたこと、殊に前記コンクリート壁の端付近の箇所は、利用者の体から落ちた水滴が集まって小さな水たまりが出来やすく、利用者は素足で本件廊下を通行するので転倒し受傷する危険性があったこと、被告の係員は1時間おきに清掃を行っていたが、清掃前には危険を防止する措置がとられてなかったこと、以上のとおりであったから、本件施設には設置または保存の瑕疵があった。
→この施設の件は、1時間おきに清掃を行っていたにもかかわらず、転倒事故直前は、
危険防止措置がとられてなかった事を理由として、被告の瑕疵を認定するという被告
側に極めて厳しいものとなっています。
大阪地裁堺支部で、視力障害者の男性が転倒し、右肘部を骨折した事件の裁判で、大阪地裁は「公共性の高い建物では障害者の利用頻度にかかわらず、安全確保のための施設整備は義務である」として、裁判所自らの瑕疵を認定し、裁判所を管理する国に対して
105万円の支払いを命じる判決を出した。